学校プログラム – 上菅田特別支援学校
「横浜市芸術文化教育プラットフォーム・学校プログラム」
上菅田特別支援学校 / 横浜市芸術文化教育プラットフォーム
2014年1月から2月までに計3回、ダンサーの上村なおかさんと一緒に、横浜にある上菅田特別支援学校でワークショップを行いました。
私は、ほぼ手作りのスピーカーで構築した10.1ch 11スピーカーによる、サラウンドな音響空間の実現と、生楽器の演奏や、生徒の声や演奏をその中にリアルタイムで取り入れた音楽演奏を行いました。
データレートは24bit96kHzで行い、ナチュラルかつリアリティのある、「音楽」と「音響」を教室空間全体で立体的に味わうことができる機会を作りました。
STスポットコーディネーター田中真実さんやスタッフさんのきめ細やかなご配慮や、ダンサーである笠井瑞丈さんや南弓子さんという贅沢なアシスタントのサポートを頂き、毎回とても新鮮な体験の連続でした。
受講者は重度重複障害のある高校生が対象で、障害の度合いや症状はそれぞれバラバラです。しかしながら、音や動きに対するセンシティブな反応はとてもクリアかつ正直です。その中で、どのような音をどのように受け取ってもらえるのか。そしてどうやってもっと「耳」を開いてもらえるのか。さらに、私自身が開けるのか。
「リズム」や「メロディ」が典型的に存在する一般的な「音楽」は敢えて奏さず、「音」や「音響」そのものにフォーカスする体験をしてもらいました。その様な、未知の形をした「音」や「音楽」に対して、すんなりと入り込んで楽しむ姿や、個人ごとの音の好みが特に印象的でした。
また、生徒にほぼマンツーマンで付き添う先生方の、瞬発力の高い非常に深い状況察知能力はまさに異次元級で、先生同士の連携も非常にスムースかつ快活。未体験ゾーンのプロの仕事を目の当たりにし、毎回ただただ静かに感嘆していました。
給食の時間にもお邪魔させて頂きましたが、障害の度合いが全く異なる同学年が一堂に会するクラスはいつも明るく元気で、こちらまで元気を頂きます。そこでも先生方が軽やかに奔走していました。「人間ひとりひとりのユニークさというのは、本当は誰でもこれくらいに開きがあるんだと思うんですよね」という田中さんの言葉に非常に納得するとともに、開放感に溢れた学校空間に、自然と心がほぐれました。
得がたい機会を頂けた事に感謝しつつ次につなげます。